〜口の悪いサンタ 3〜 RyuGaの絵の無い絵本 (坂根龍我 作品 紹介№308 )
クリスマスキャロル
〜口の悪いサンタ〜
RyuGaの絵の無い絵本 第3話
言われて男の子はゆっくり、ソロリソロリと手を差し伸べました。
でも、その手は口の悪いサンタの白いワサワサとした立派な髭に触れることはありませんでした。
男の子の手は途中でハタリとベッドのお布団の上に落ちてしまったのです。
「・・・何だボウズ、どうした。触らなくてもいいのか?」
「・・・ううん、そうじゃないんだ・・僕の手、さっき位までしかあげられないし・・あれ以上あげていられないの・・・」
「何だそりゃ?
どういう事なんだ?」
男の子はゆっくりと話し始めました。
「僕ね、病気になっちゃったの。
それでね、去年は歩けなくなって・・・
今はもう手も動かし辛いんだ・・」
「ほう、病気か、そいつぁ大変だな。
で、いつ治るんだ?」
精霊であるサンタに病気はありませんから、口の悪いサンタには男の子の言う病気の事がよくわかりません。
「・・・お医者さんにも診て貰ってるんだけど・・たぶん、もう治らないと思う・・。」
「ボウズ、そりゃおかしいだろ。
治るように医者ってやつに診て貰ってるわけだろ?
なら治るだろう。」
「・・昨日、パパとママが話してるのを僕聞いちゃったんだ・・
僕を治せるのは、もう神様くらいのもんだって・・・。
ママ・・泣いてた・・。」
そう言うと男の子は、元気なく下を向いてしまいました。
大きな目にいっぱいの涙が溢れています。
男の子の顔を覗き込んで、口の悪いサンタは慌てました。
「お、おいおい、泣くんじゃねぇよぉ・・
参ったなぁ・・イブの晩だぜ・・。」
「・・ごめんなさい・・
でも、僕の病気は・・だんだん悪くなっていって、いつか僕は・・。
僕、こわい・・・。」
口の悪いサンタは、何だかこの男の子が少し可哀想に思えてきました。
そして、この子に何かしてやれる事はないだろうかと考え始めました。
怠け者で口の悪いサンタの心の何かがほんの少しだけ変わろうとしています。
「・・なぁ、ボウズ。
オメェそれじゃ外で遊んだりしてねぇのか?」
「うん・・僕もう歩けないし、お外の空気は僕の体には悪いらしいからダメだって・・・もう長い事お外には行ってない・・。」
「・・・そうか・・・・・・・・。
‼︎・・!、なぁボウズ、ならこれから俺様と一緒にソリに乗ってみねぇか?
空から、広い外の世界ってのをオメェに見せてやらぁ!
どうだ?」
男の子は、ハッと顔をあげ、不自由な手で涙を拭きながら口の悪いサンタを見上げました。
「本当に⁈
本当にサンタさんと一緒にソリに乗れるの⁈
僕を連れてってくれるの⁈
本当に⁈」
男の子の濡れた瞳は思わぬ喜びと期待にキラキラと輝いています。
「ああ!本当さ!
俺はウソは言わねぇ。サンタに2言はねぇ!」
「あ、でもお外は寒いんだよね。
僕、いつもベッドだから今パジャマしか着てない・・。」
「心配するな。
俺様のこの服に包まれていれば、暖炉の前にいるより暖かい。」
口の悪いサンタはそう言うと、男の子を軽々と抱き上げて自分の服に包みました。
「本当だぁ、あったかいや。
足の先まで、手の指の先まであったかい!
とてもとてもあったかいや!」
「さてと、オメェを連れて煙突から出るわけにはいかねぇからな。
この窓にソリを呼ぶか。」
口の悪いサンタは男の子のベッドの頭の方にある窓を開け、小さく ホォホォーと呼びました。
屋根で鈴の音がシャンッと1度鳴ったかと思うと、光の粒を撒き散らしたソリがトナカイ達にに引かれて、音もなく窓辺にそっと横付けされました。
トナカイ達は早く走りたくて、しきりと首を動かし、もどかしげに脚を蹴っています。
その度に光の粒がキラキラと散っています。
口の悪いサンタはかばうように男の子を包みながら、ソリに乗り込みました。
そしてトナカイ達の手綱を引くと言いました。
「ボウズ、行くぞ!」
「うん!」
To Be Continued・・・・・・・
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