waca-jhi's diary

笑いも涙も浄化には大きい力になるといいます。そしてカルチャーショックは気付きの第一歩、たとえ小さくても感動は行動への第一歩。

『鬼とロックとコーラ瓶〜流血の白塗り事件』-2 (坂根龍我 作品 紹介№360 )

・・・(続き)・・・⁉️

かくして僕の顔と上半身は真っ白に塗られ、目の周りは十字に黒く縁取られ唇も黒く塗りつぶされた。

そして

ほい、マイクな。

と拡声器を渡されたのである。

拡声器ーーーー⁉️

あの学生運動の場面などでお馴染みのヤツである。

ヘルメット被って、タオルで口元隠し、角材持って我々はぁーーーーーー!とよく学生が怒鳴っていたアレである!

ハウリングおこしてピー!ガー!となる、アレである!

僕の頭の中は ⁇⁇⁇ だらけである。

・・・あの・・・

と口を開きかけた時、連獅子が僕の肩を抱きながら言った。

とりあえず、演ってみるから俺らの音よー聴いて歌覚えてくれる?

ライブも迫っとるし、あんまり時間無いんやわ。

は⁇ライブて!いや、僕は!

の声はもう彼等には届いていなかった。

図駄々ダダダダダッ‼️魏ャーン擬ャーンぎゅいい〜〜ン‼️図ボボボン梵盆‼️媚ャー毘ャー琵ョー‼️

〆¢〓♂≫⁂々$■♀⌘℃ーーーー‼️‼️‼️

鼓膜が腸捻転を起こすかと思う程の音量(怨霊)に もはや何を言ってるのかサッパリわからない歌詞の歌。

・・・・・帰ろ・・帰って寝よ・・悪い夢や・・帰ってラーメン食てオシッコして屁こいて寝よ・・明日はきっとエエ朝が来る・・・・。

自分に言い聞かせながら、そっとライブハウスの扉を開けようとした時、扉近くに設置してあった大きな鏡に白塗りの自分の姿がうつったのである。

あ!あ!アカン!

俺も鬼なってもた!

何の事はない、ただのメイクなのであるが、異常事態の僕の脳はパニックを起こし朦朧としていたのだと思う。

しゃーない、こうなったら俺も鬼に加わらな帰れん!

なんでやねんっ‼️

さすがのサイモン&ガーファンクルも訳のわからない鬼の集団に毒され、彼方へと飛んで行ってしまったのだった。

帰りに 「これ聴いて覚えといて。」とデモテープと歌詞を書いた紙を渡された。

かくして僕は無情にも、当時としてはまだ珍しいデスメタルビジュアル系(?)のバンドのボーカルとなったのである。

帰りの道中、電車内で歌詞を開いて読んでみた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

あまりの酷さに周りの目を気にしながら絶句した・・・。

♫かわい子ちゃんはぶっ殺せ!

いい子ちゃんもぶっ殺せ!

政治家、先生ぶっ殺せ!

正義の味方もぶっ殺せ!♫

美しさのカケラも無い。

バカ丸出しの歌詞である。

おそらくデビューは出来まい・・。

それからある人の助けも借り、何とか歌ってそれなりの格好もつき、ある程度鬼どもの満足する水準に達した僕は、以後怒涛のロック道を歩く事となるのである。

しかし、他のメンバーは皆大学生だったのに対し、僕だけが高校生で歳下だったため、バンドの中ではパシリ的存在であった。

おい、クー!(なぜかそう呼ばれていた)ちょ、タバコ買うて来てくれや。

お!俺も!

あ、俺ビール!

え〜、メイクのままでですかぁ〜?

何や嫌なんか⁈

・・・わかりましたよ、行きますよ・・。

万事この調子である。

メイクのままで、タバコ屋のバアさんの心臓を何度止めかけた事か。

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そんな日々がガラッと変わる日が来ようとは、他の鬼どもはおろか、僕自身にも想像も出来なかった。

その日は京都の南に位置する、とある城の中の公園に建てられた野外ステージでのライブだった。

当時のロックのライブは、それはもう凄まじい程の荒れようだった。

自分の贔屓以外のバンドが出て来ようものなら、帰れ!帰れ!の野次と共に水、石、パチンコ玉、コーラ瓶、靴、果ては男のパンツ等等がプロ野球のピッチャーかよ!と思う程の命中率で雨アラレのごとく投げつけられたのである!

ちょいと有名ドコロのバンドが出演するとあって、客席はほぼ満員の状態であった。

我々の出番は前座の3番目。

先のふた組みのバンドは見るも無残な状態で、衣装はビシャビシャのベトベト、楽器は至る所が凹み傷ついていた。

いよいよ出番となったのだが、会場はかなり危ない雰囲気だった。

出て行くや否や、帰れ!コールと共にモノが投げられ始めた。

メンバーはそれぞれ自分の楽器を守るのに必死!

とうとう斜め後ろを向きながらの演奏となった。

僕はついにステージに寝転がりながら歌う事となってしまった。

飛び交うモノを避けながら!

しかし

ゴガッ‼️

目の前に火花が飛んだ!

僕の額にコーラ瓶が強烈な勢いで命中したのである!

実はその後の記憶が無い。

全く無い。

メンバーはほぼ後ろ向きなので、僕に何が起こったのかが判らない。

アレ?ボーカルの声が聴こえない・・。

アレ?モノが飛んで来ない?

アレ?客席のザワメキがさっきとちょっと違うような・・・。

と彼等が向き直って見たものは・・・。

客席に降りて、1人の客の胸ぐらを掴んで殺しかね無い勢いで何かがなっている血だらけ僕の姿だった。

ヤバいッ!とばかりに楽器を置き、僕を止めに入ったらしいのだが、目を血走らせた僕は何をトチ狂ったか、噴水の髪を鷲掴みにして連獅子の頬に頭突きを食らわせ、銀髪鬼太郎の股間に蹴りをいれ、逆さ絵の髭を掴だところで気を失って倒れたという事だった。

え〜、重ねて言っておくが、記憶は無い。

目を覚ました時は病院のベッドの上だった。

幸い額の傷はたいした事無くふた針縫っただけで終わっていた。

心配したメンバー達が一緒にいてくれたのだが、気づいた僕がムクッと起き上がると ヒェッ!と言う軽い悲鳴と共に皆壁に張り付いたのが不思議だった。

アレ?頭痛い・・。

みんなどうかしたんっスか?

医者から治療の軽い説明の後、頼むから帰ってくれとの懇願を受け、メイクのままの僕達はゾロゾロと病院を後にした。

入院患者さん、外来の患者さん達の視線が痛かったのを覚えている。

 この記事は彦根市の漆の工芸家、坂根龍我さんの
了解をいただき、F.B.投稿を紹介させていただいています

腕に点滴を差し、鼻に呼吸器をつけているバアさんには手を合わせてナンマンダブナンマンダブ!と拝まれた。

その日以来、バンドの中での僕の立ち位置が変わったのである!

あぁ!喉かわいたなぁ〜。

あ、クー喉かわいた?

何か買うて来よか?

????

何か今日は上手く声が出ないッす・・すみません。

あ、エエねんエエねん。

疲れたんやろ、ちょっと休み。

????

万事このような具合。

後に逆さ絵から聞いたところ、客席で暴れた僕は血まみれの野獣に見えたとの事だった。

で、あいつはアブナイから絶対怒らすなとのお降れが皆から出たという訳だったようだ。

この、『野外ライブ、コーラ瓶血みどろの戦い!』を始めとし、『野外ライブ、雨の日スパーク感電事件』や『楽器破壊でNHK出演ならず!』など数々の伝説を残し、バンドは彼らが大学を卒業する半年位前まで続いた。

僕はその後、念願のアコースティックのデュオを組む事となり、彼らが今何処でどうしているのかは皆目わからない。

幾年か前、デトロイトメタルシティという松山ケンイチ氏主演の映画があったが、サイモン&ガーファンクルを目指しながら、デスメタルバンドで歌わされていた僕には涙無くして観られない映画であった。

さて中盤に「ある人の助けも借り」と書いたが、このある人とは・・・。

歌ってみるがどうも上手くいかない。

そもそもガナリたてる歌など歌った事も無い。

銀髪鬼太郎が言った。

あのな、ロックの声やないなぁ。

お前もっと腹から声出せや!

もっと声潰さんと!

酒飲んでるか?

タバコ吸うてるか?

だから高校生ですって言うてるやないですか!

あのな、ロックに未成年もくそもない!

内面から噴き出す魂の叫びやないか!

お前からはそれが感じられん。

あのな、俺らの衣裳とかメイクとかな、基本のデザインやってくれてるヤツがいるんよ。

美術系の学校のヤツやねんけどな。

お前の衣裳も頼まなアカンし、何よりロックがよー解っとる!

そいつにお前預けるからしっかり色々教わって来い!

エエか、明日ここもっかい来い!

俺らは居らんけど、そいつに渡りつけとくから、絶対来い!

で、今度の練習の日までお前を預ける!

え〜〜〜〜⁉️

翌日、ライブハウスに居たのは気だるそうにタバコをふかしている華奢な感じの女性だった!

・・・アンタがクー?

・・はい

ん、

はい?

ん‼︎

・・・は?

ワタシが吸ってたタバコ!

早よ吸い!

これが不思議な彼女との出逢いであった。

以後、酒、タバコ、・・・・、と色々教わりロックを知る事となるのだが、この話しはいずれまた書く気になった時お話し出来ればと思う。

                

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