〜口の悪いサンタ 9 〜 RyuGaの絵の無い絵本 (坂根龍我 作品 紹介№314 )
クリスマスキャロル
〜口の悪いサンタ〜
RyuGaの絵の無い絵本 第9話
母親は声をあげて泣き始めました。
父親は優しく母親を抱き締めて言いました。
「あの子はとても頑張ったじゃないか。
今年のクリスマスには僕は治るんだって言って、病気に負けまいと頑張ったじゃないか。
ね、もうゆっくり眠らせてあげよう。
そうだ!明日はクリスマスだ。
何かプレゼントを持って、あの子のお墓に行こうよ。
そして、2人であの子の思い出を語ろう。」
母親は一層強く泣き始めました。
(‼︎・・・ボウズの墓だとォ⁈・・・そんな・・そんな・・・なんてこった・・ボウズ・・死んじまったってのかよ⁉︎・・・・・・・・・。)
その後、口の悪いサンタはどうやって戻って来たか覚えていません。
気がつくとあの男の子の部屋で男の子のベッドに腰掛けて俯いていました。
身体も元の大きさに戻っています。
「俺ぁ、てっきりボウズの病気が治ったんだと思っていたぜ・・・。
医者が良い薬かなんかでよぉ・・・。
・・・可愛いボウズだったな・・目が大きくってよ・・髪なんか柔らかくてフワフワしてたな・・。
力の入らない手で・・・・・・一生懸命俺の腹にしがみついて・・・・笑ってたな・・・・・胸のハートのアザまで・・キレイでよ・・・・・・・・。」
口の悪いサンタの目からポタポタと大粒の涙が溢れては、薄っすらと汚れた床に落ちました。
「・・・何で、俺、泣いてるんだ・・?
たった1度会っただけのガキじゃねぇか・・・
ちきしょう!
・・・・あの時、俺がひねくれなければ良かったのかよ・・
神様に寿命の半分・・差し出してりゃ・・ボウズは元気でいたのかよ・・・・・・・。
そうだよなぁ・・・そうすりゃ良かったんだよなぁ・・・・・。
ボウズ・・本が読みてぇって言ってたよなぁ・・・
そんな小さな望みも・・・
俺はバカだ・・・・・・・・
ボウズに会いてぇなぁ・・・・・。
俺は・・・何てことしちまったんだ・・・・・。」
その時、窓辺からソリの鈴がシャンッと鳴りました。
窓に目を向けると、トナカイ達がソリを引いて口の悪いサンタを迎えに来ています。
トナカイ達は西の方角に向かい、しきりに首を振り脚を蹴っています。
「そうか、もうすぐ夜が明けちまうのか・・。
帰らなきゃな・・・・。」
口の悪いサンタは、涙を拭おうともせずノロノロとベッドから立ち上がり、窓からソリへと乗り込みました。
でも、あの勢いのある「ホォ、ホォーー!」という
掛け声はいつまでたっても聞こえません。
それどころか、目を閉じたままジッと何かを考えている様子です。
やがて走りたがっているトナカイ達がしびれを切らしそうになったころ、口の悪いサンタは目を開け真剣な瞳を天に向け言いました。
「トナカイ達よ!このまま真っすぐ神様の元へと急げ‼︎
風にも負けぬ勢いで駆け抜けろ‼︎
ホォホォ、ホォーーーー‼︎‼︎」
鞭の音がピシリッとうなると、トナカイ達はブルルッ!とひと声鳴き、全速力で走り始めました。
そして、口の悪いサンタを乗せたソリは、あっという間に天に吸い込まれていったのです。
輝く月を走り抜け、星を追い越し、光の粒を撒き散らしながらソリは風のように走ります。
口の悪いサンタの帽子は今にも飛ばされそう!
白い立派な髭は撫でつけられた様に風に押さえられています。
「ホォホォホォーー!
トナカイ達よ!もっとだ!もっと早く俺を神様の元へ届けてくれ‼︎」
やがてほんのりと明るく見える聖域が見えて来ました。
口の悪いサンタはソリのまま神様へと通じる門をくぐると、静かにソリを停め自分は飛び降りました。
そして大きな声で神様を呼んだのです。
「神様ーー!
神様ぁーーーー!
お願いです!どうか姿をみせて下さい!
そして俺の話しを聞いてください!」
To Be Continued・・・・・
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