〜口の悪いサンタ 8 〜 RyuGaの絵の無い絵本 (坂根龍我 作品 紹介№313 )
クリスマスキャロル
〜口の悪いサンタ〜
RyuGaの絵の無い絵本 第8話
「さてと、ボウズの顔を見るのは1番後にしよう。
先に大事な用事を済ませちまおうぜ!
それ!ホォホォ、ホォーー!」
と言うと、口の悪いサンタはトナカイ達に鞭をふるい大急ぎで世界中の良い子達にプレゼントを配り終え、あの男の子の住む小さな可愛いお家へと向かいました。
1年ぶりに見る空からの景色です。
「あったあった!あの家だ!」
でも、ひとつだけ去年のクリスマスイブの晩と景色が違いました。
男の子の部屋の窓に、あのキャンドルの小さな灯りが灯っていません。
「おや・・・?
灯りがねぇぞ・・・。
ボウズ、寝ちまったのかな・・・」
サンタのソリは男の子のお家の可愛い屋根の上にとまりました。
「ホォ、ホォー。
じゃ、ちょいと行ってくるかな。
トナカイども、おとなしく待ってろよ。」
そう言うと、口の悪いサンタはトナカイ達の首を撫でてから煙突の中へと消えていきました。
「・・相変わらず狭ぇなぁ・・
おいおい、去年にも増して掃除してねぇな・・
こりゃぁ、流石に身体を小さくしなけりゃ真っ黒になっちまわぁ!」
やっと暖炉に抜けた口の悪いサンタ。
去年と同じように男の子のいた子供部屋へと向かいます。
そして、ブルーの可愛いドアを去年と同じようにそっと開けて中へと入りました。
「・・ぉぉ〜ぃ・・・」
口の悪いサンタは出来るだけ小さな声で呼びかけてみました。
「ボウズ、寝てるのか・・・?」
男の子の部屋はシンと静まり返って、物音ひとつ返っては来ません。
「・・・なんだ?
・・・ボウズいねぇのか・・?
起きて返事しろ〜・・・
俺様だぞ〜・・サンタが来たぞ〜・・・。」
相変わらず男の子の部屋は何の物音もしません。
それどころか部屋を暖かくした様子もありませんでした。
口の悪いサンタは、男の子が起き上がっていたベッドへと近づきました。
去年、男の子と一緒に飛び立った窓から、夜の薄青さに照らされて誰もいない男の子のベッドだけがそこにありました。
ベッドのお布団は綺麗にされていて、人が使った気配すらありません。
「・・何だ?
誰もいねぇのかよ・・。
あのボウズどこ行っちまったんだよ・・。」
男の子がいたベッドの側のテーブルの上のキャンドルは、灯された様子も無くて硬く冷たくなっていました。
それにテーブルの上には薄っすらと白いホコリさえ見られたのです。
見ると、床の上にも薄く白いホコリが敷かれています。
そうです、男の子の部屋はもう長い事使われた様子が無いのです。
口の悪いサンタもさすがにおかしいと思い始めました。
「・・・おいおい、いったいどうなってんだ?
身体が治ったっていったって、まだ小さなガキだ。
長い事家を空けられる訳がねぇ・・。
何があったってんだ・・・。」
その時、階下の部屋から物音が聞こえました。
「‼︎ なんだ、ボウズ下の部屋にいたのか。」
少しホッとした口の悪いサンタは、階下へ降りて様子を伺う事にしました。
男の子の両親に見つからないように、そっと、そっと。
何と言ってもサンタは子供達のサンタクロースですからね。
大人に見つかる訳にはいかないのです。
物音のする部屋からは、男の人と女の人の話し声が聞こえてきました。
それはどうやら、あの男の子の両親だとわかりました。
部屋の扉が少し開いていて、中の様子を見る事が出来ます。
口の悪いサンタは、見つからないように慌てて身体を小さくしました。
でも男の子の姿はこの部屋にもありませんでした。
口の悪いサンタは、身体を小さくしたうえに尚も身をかがめるようにして2人の話し声に耳を傾けました。
見ると、母親の方は椅子に座り、テーブルに肘をつき手のひらは顔を覆っています。
泣いている事がうかがえました。
父親は自らも泣きそうなのを我慢して、母親の傍らに立ち母親を慰めるようにその肩に手を置いています。
「・・さぁ、もうそんなに泣いてばかりは良くない。
あの子だって喜ばないよ。」
「・・・だって、あなた・・・大切な大切な坊やだったんですもの・・・。
ああ、私の可愛い坊や・・・。」
(・・・だった?・・喜ばない?・・どういう事だ・・・?)
To Be Continued・・・・・
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