waca-jhi's diary

笑いも涙も浄化には大きい力になるといいます。そしてカルチャーショックは気付きの第一歩、たとえ小さくても感動は行動への第一歩。

〜口の悪いサンタ 6〜 RyuGaの絵の無い絵本 (坂根龍我 作品 紹介№311 )

クリスマスキャロル
〜口の悪いサンタ〜

RyuGaの絵の無い絵本 第6話

すると、口の悪いサンタの目の前に小さな光の玉がスッと現れ、

みるみる大きな眩い黄金色の光となり、その中に背が高くて白い衣をまとった優しげな男の人が現れました。

「・・・お前か・・相変わらず口が悪いな。

それで?お前がわたしに何の用だ?」

その人の声は静かなのに、世界に響き渡るような力強さがありました。

「神様!

実は地上で、1人のガキに会いまして・・。」

口の悪いサンタは地上で出逢った男の子の事を神様に話し始めました。

どんなに可愛いい子だったか、どんなに良い子にしていたか、そして病気になって辛い思いをしている事も、少し大袈裟にみんなみんな話しました。

さぁ、ここからが肝心なところです。

「それでね、そのボウズが言うには、次のクリスマスには元気な体が欲しい。

良い子にしてるから、元気な体をプレゼントして欲しいって事なんです。

何とかボウズの願いを聞き入れてやって下さい!

神様、お願いします。」

そう言って、口の悪いサンタは一応頭を下げました。

一応と言ったのは、頭は下げていても目は上目遣いに神様を見ていたからです。

「・・お前は本当に相変わらずだな。

まぁ良い。

その子供の事はよく知っている。

神である私が地上の全てを知らないはずはないだろう。

それで?お前はどうしてやりたいのだ?」

言われて口の悪いサンタは少し慌てました。

男の子の病気を自分がどうしてやりたいかとまで考えた事はなかったからです。

自分はただ男の子のお願いを神様に伝えに来て、神様に男の子を任せればいいとだけ思っていたのです。

「どうしてやりたいって・・そりゃぁ・・神様からボウズに元気な体を・・・そうすりゃ俺様だって来年は鼻高々だしよ・・。」

「そうか、鼻高々か。

しかしな、あの子どもの病いはなかなかに重い。

また、地上には地上の理りもある。

私が神であるからといって、そうやすやすと変える訳にはいかないのだ。」

「そいつぁ困るぜ!

俺ぁボウズに頼まれたんだ。」

口の悪いサンタは、困った顔で言いました。

男の子に神様に頼んでやると言ってしまった手前、出来ないとなると自分の立場がありません。

しばらく考えていた神様はゆっくりと口を開きました。

「ひとつだけ、あの子供の願いを叶えてやる方法がある。

ただし、お前がわたしの出す条件を聞き入れるのなら・・だが。

さて、どうする。」

「何だよ、出来るんじゃねぇかよ。

じゃ、さっさと頼むぜ。

で?条件てのは何だい?

酒を半年間止めるってのはカンベンだがな。」

神様の言葉を聞いた口の悪いサンタ、少し肩の力が抜けたように冗談まじりに応えました。

ところが、神様の出した条件とは思いも寄らないことだったのです。

「そんなことではない。

私の言う条件とは、サンタとしてあの子供に関わったお前の寿命の半分を私に差し出すということだ。」

神様の言葉に、口の悪いサンタはそれはもう驚きました。

「・・何だって‼︎

俺の寿命の半分を渡せってか⁈」

「そうだ。

そうすればあの子供の願いは叶う。」

「おいおいおい、冗談じゃねぇゾ!

たった1度会っただけの地上のガキのために、何で俺様の寿命の半分もやらなくちゃいけねぇんだよ!

よぉ、神様、おかしいじゃねぇか!」

口の悪いサンタの抗議に神様は何事も無いようにゆっくりと言いました。

 この記事は彦根市の漆の工芸家、坂根龍我さんの
了解をいただき、F.B.投稿を紹介させていただいています

「私は冗談など言ってはいない。

複雑になり、私の介入もなかなか難しくなった地上の世界に、私は年に1度子供たちに私からの贈り物を届け、子供たちの笑顔を護れるようにとお前達をつくった。

お前が関わったその子供の願いを、お前の願いとするのに何の不都合があるというのだ。

まして精霊であるサンタの寿命は人より遥かに長い。

分けてやったところで何ということもあるまいに・・。

なぜそのように怒るのか。」

「あのなぁ神様よぉ!

いくらアンタがつくった俺様だとしてもだ!

俺のものは俺のものだろうが!

サンタであろうが無かろうが、俺様のものは俺様のものなんだ!

俺ぁ、アンタがサンタに仕立てたからプレゼントを地上に運ぶ仕事をしているだけなんだぜ!

簡単に自分のモノをヒトに分けてなんてやれるもんか!ましてや寿命だぜ!」

「・・・ほぉ、お前はそのような考えなのか。

私の意志とはまるで違うのだな。

しかし、お前はあの子供を自分のソリに乗せてやったではないか。

あの子供の体を思い遣り、自分の上着まで貸してやった。

それに、お前へという食べ物まで分け与えてやったではないか。

お前も嬉しく感じているのだと私は見ていた。

分け与えてやる喜びに何の違いがあるというのだ。」

自分が男の子にしてやった事を言われて、口の悪いサンタはなおさら怒ってしまいました。

「なんだぁ?ずっと見てたのかよ!

神様ってぇのは随分と悪趣味なんだな!」

「言ったではないか。

神である私にわからぬ事などない!と。

そのヒネクレた心さえおさめれば、お前は思い遣りのある優しいサンタだと私には見えるのだが・。」

「うるせぇ!

食い物と俺の寿命とを一緒にすんじゃねぇや!」

しばらく2人の間にこんなやり取りがあり、2人の意見は全く噛み合いませんでした。

やがて痺れを切らした口の悪いサンタ。

「もういいぜ!

これ以上話してもムダだから俺ぁ帰る!」

とソリに乗ると腹立たしげにトナカイに鞭を振るいました。

ソリは勢いよく神様のもとを離れて、元来た道を走り出します。

後ろで神様が言いました。

「サンタよ!

よく考えるのだ!

そのヒネクレた心をおさめるのだ!

そんな考えのままでは、あの子供は・・・。」

ソリが遠く離れてしまったので、口の悪いサンタに神様の最後のほうの言葉は届きませんでした。

To Be Continued・・・・・

                

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