〜 口の悪いサンタ 4 〜 RyuGaの絵の無い絵本 (坂根龍我 作品 紹介№309 )
クリスマスキャロル
〜口の悪いサンタ〜
RyuGaの絵の無い絵本 第4話
男の子の顔はさっきまでとはまるで別人のように微笑みに溢れ輝いています。
「ホォッ!ホォォーー‼︎」
鞭を振るい、ひと声高くあげたサンタの声にトナカイ達は勇ましく空を蹴り、2人を乗せたソリは光の粒を一層たくさん撒き散らしながら高く夜空へと飛び立ちました。
「凄いや!僕、お空を飛んでる!
お星様はこんなにキラキラしてるんだ!
お月様はこんなに明るいんだ!
風って気持ちいいものなんだね!
夜って暗くて怖いのかと思ってた。
違うんだね、蒼くてとっても綺麗だ!
街があんなに小さく見えるよ!
お家がまるでお砂糖で出来たお菓子のよう!」
男の子の淡い栗色の髪が風になびいて、さながらサンタに抱かれた天使のように見えました。
「ハッハッハァ!
そうだぞボウズ、俺たちの周りは美しいものでイッパイ囲まれているんだ。
よぉ〜く覚えておくんだな。」
「うん!ありがとう!」
サンタのソリは特別のソリ。
サンタのトナカイは特別のトナカイ。
さぁ!
2人を乗せたソリは、ひとっ飛びで世界を駆け巡ります。
空の色は深い藍色から漆黒の闇を見せたかと思うと、明るく透明なブルーから優しい橙色まで、様々に表情を変えて男の子を楽しませてくれました。
そしてインドや日本、フランスやオランダ、色んな国をそれこそあっという間に走ります。
男の子の目を丸くしたり、輝かせたりする世界の何と荘厳で美しい事か。
白くて丸い屋根の不思議な寺院。
四角くて隅に大きな魚が尻尾を立てているお城。
凱旋門や風車。
高みから見る、野に咲く小さな花にも男の子は喜び、口の悪いサンタもいつもの仏頂面を、どこかに忘れて来たかのように男の子と一緒に笑っています。
途中、口の悪いサンタは何度も様々なお家の屋根に止まっては、ソリの後ろに乗せた白い大きな袋からプレゼントを取り出して、大きな煙突、小さな煙突へと入っていきました。
煙突のないお家では、何かの呪文を唱えるとスッと扉を開けて入って行きます。
その度に1人残された男の子は、口の悪いサンタがまた見つかるんじゃないかとハラハラしながら帰りを待ちます。
男の子を1人にする時、口の悪いサンタは必ず自分の上着を脱いで男の子を包む事を忘れませんでした。
やがて、親指を立て、ニヤリと片目をつぶった口の悪いサンタが帰って来ると男の子は嬉しそうにサンタの大きなお腹に抱きつく様に身を寄せました。
時にはサンタがワインやターキーの肉を持って帰ってくることもあったのです。
そんな時男の子は、少し不安そうに訊ねました。
「・・あの・・盗んだんじゃないよね・・?」
「バカ言うんじゃねぇよ!
これはな、サンタさんへプレゼントです。って書いて置いてあったモンだ!
貰ってやらなきゃ可哀想じゃねぇかよ。
ほらよ、齧り付いて食いな!
たまぁ〜にこんないい事もある。」
言いながら口の悪いサンタは美味しそうにワインを飲んだのでした。
男の子はお行儀の良くない食べ方が嬉しくて楽しくて、たくさんかぶりつきました。
それでも病気だったので、普通から見ればほんの少しの量だったけれど。
男の子が世界に驚き、口の悪いサンタと楽しく過ごしている間に、プレゼントを入れた袋はだんだんと空になっていきました。
そしていつしかソリは、男の子の住む国へと戻って行ったのです。
地平線の彼方、遥か遠い場所が微かに薄っすらと白くなって来ました。
「さてボウズ、そろそろオメェの部屋へ戻るぜ!
後、数時間で夜が明けちまわぁ。」
口の悪いサンタはそう言うと、鞭を振り大急ぎで男の子の部屋の窓辺とむかいました。
そして、飛び立つ時と同じように男の子をかばいながらベッドへと運びました。
「ボウズ、今夜のことは誰にも内緒だぜ。
さ、早く寝な。
もうクリスマスだ。」
「うん、ありがとうサンタさん!
僕、とっても楽しかった!
何よりも何よりも嬉しかった!」
今の男の子の頬はほんのりと赤みがさして、とても病気のようには見えませんでした。
「あぁ、俺も・・・まぁ、楽しかったぜ・・。
じゃあなボウズ!」
口の悪いサンタは少し照れたように言って、帰ろうとしました。
「あ、あの、サンタさん!」
男の子は何かを思いついたように、慌てて口の悪いサンタを呼び止めます。
To Be Continued・・・・・・
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