弟子ものがたり (坂根龍我 作品 紹介№226)
《過去の投稿に再び 少し手を加えて》
弟子修行の頃、師匠のアトリエから20分くらい歩いた所にスナックがあった。
女傑と呼べるママが一人で、アルバイトの女子大生2人を雇って営業していた。
スナックと称しているが、昼は喫茶で、夜もカウンターのみ。
煌々とした灯りの下。
カラオケなんて以ての外!
女の子のお酌もない。
おまけに夜10時に閉店、客は否応なしに帰らされる。
ママ曰く、人様の大切な娘さんを預かって働いて貰ってるんだ。
あんたらのお酌は私で十分!
この娘達にちょっかいかけたら出入り禁止!
アンタらにも待ってる人がいるんだから、健全な時間に帰す。
たまに彼女達のお酌に預かる人間もいたが、ママにすれば男と認めていないか、ゲイのどちらかだと言う事だった。
それでも常連客が多く、店はいつも静かに賑わっていた。
若い頃というのは無茶なモノで、食事の金は無くても酒の一杯が恋しくて、よく寒い懐を抱え、トボトボと歩いて行った。
簡単な賄いが出て来て 食べてないんだろ、これ食べてから呑みな。 と つっけんどんな優しさに腹を満たして貰った事も数多くあったと思う。
また、同じように常連の何人にも助けられた。
ポール・ニューマンと呼ばれていた土建屋の社長、ヤクザのような風体の刑事のハギさん、刑事のような身なりの、ヤクザのムラさん、大学6年生だったカニさん。
みんなありがとうございました。
僕は蒔絵師になり、漆芸家などと呼ばれ、厳しく苦しいながらも今を生きています。
あなた方の不敵な笑顔は忘れられません。
作品を手掛けながら、過ぎ去った時を思い頬が緩んでしまった。
今の僕は、お酌を認めて貰えるくらいになれたかな。
今はもう無い店、もういない人達。
坂根さんの作品は目次にも使えるピンタレストに入れてあります。
いつでもどれでもお好みの作品を楽しんでください。
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