waca-jhi's diary

笑いも涙も浄化には大きい力になるといいます。そしてカルチャーショックは気付きの第一歩、たとえ小さくても感動は行動への第一歩。

弟子物語 (坂根龍我 作品 紹介№225)

彦根市の漆の工芸家、坂根さんの作品を楽しみましょう】

 

弟子入り早々の頃。半年後くらいだったと記憶している。

師匠、兄弟子の下働きを経て、やっと1種類の仕事を渡された。

デフォルメされた竹の絵の文庫。

所謂、弟子修行用として得意先から頂いた育成を兼ねた仕事だ。

もう代々弟子育成用として図柄が決まってはいるものの、描く場所を品物に写す作業から金粉を蒔き、磨き上げまで全てを自分1人で行う。

嬉しくも緊張の連続である。

図案を品物に写す作業を 置き目 という。

描く目安を品物に置く(写す)事からの呼び名と覚えている。

何枚もある蓋に置き目を施し、いよいよ本番。

漆を出し、筆に漆を含ませる。

そして、

描いていく。

竹、竹、竹・・・・・。

描きあげてから師匠に見てもらい、意見をうかがう。

意気揚々とうかがう!

出来ました!

・・・・坂根君・・

はい!

・・・これ・・骨やぞ・・

・・・・は?・・

ま、大腿骨部分っちゅうとこやな。そこそこ栄養は行き渡っとるようやが。

・・・は・い。

意気消沈。

吹き出す兄弟子。

図案をよー見て、竹を思い出して。ほい、もう1回。

・・・はい。

再び、置き目作業からやり直し。

描く!挑む‼︎

竹、竹、竹、竹・・・。

描き上がりを自分で見る。

図案と見比べる。

・・出来ました。

・・・坂根君・・

・・はい・・

今度は・・竹輪やな・・

・・・・は、、、い?

竹輪の3段重ねやな。ま、竹輪だけにさっきよりは近づいたようやけどな。

・・・・。

兄弟子の肩が震えている。

描き直し!

・・はい。

このようなやり取りが何度か繰り返され、幾度目かにやっと

ふ〜ん・・・ま、ええやろ。

と師匠から、ま、付きのOKをいただけた。

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自分の席に着くと、隣の兄弟子から親指を立てたサインと笑顔。

マジに泣きそうになった。

プロの蒔絵師として、スケッチや観察力の大切さ、たゆまない努力を叩き込まれた大切な1歩だった。

あれから幾年月、今や生徒さんや弟子に伝授する側に立っている。

僕は、代々漆を生業とした家に産まれた訳ではない。

ただ漆に魅せられてこの世界に飛び込んだ人間だ。

何もわからず、何も知らずに入った自分をここまでに育てて頂いた師匠は、文字通り 師匠 であり、今でも心から感謝し、尊敬している。

秋冬のゆうげ、美味そうに煮込まれたおでんの竹輪を見る。

つい、3段重ねをしてしまう。

竹輪で右往左往しているその頃の自分がいて、つい笑ってしまう。

                   

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